平野久美子 TOP TOPICS JORNEY TAIWAN DOG BOOKS TEA
第三回 介護の前兆? 後ろ脚が急によたよた!
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  りきゅうが急に衰えだしたのは、2010年秋のことだった。113年ぶりの酷暑が続いた夏が過ぎ、涼風が吹き出したとたんに父が亡くなった。その葬儀のあたりから目に見えてりきゅうの体力が低下してしまった。父の死に、今も大きな喪失感を覚えているようだ。
 というのも、葬儀が済んで、火葬場から骨壺とともに帰宅して祭壇に安置したとたん、留守番をしていたりきゅうが、今まで一度も出したことのない悲痛な、慟哭ともとれる遠吠えを何度も繰り返したのである。
 その様子は、父の御霊をあの世へと送り届ける,忠実な従僕の露払いの儀式のようでもあり、霊界と交信しているようでもあり・・・ 。とにかく数キロ四方に届くような渾身の遠吠えをやってのけた。 以来、父の居室があった二階を眺めていたり,夜中に探すような気配を見せる。考えて見れば、りきゅうと父は私と母が想像も付かぬ絆で結ばれていた。 留守がちな私たちと違い、父とりきゅうはいつも一緒にお留守番をしてくれていた。 鬼の居ぬ間に、父は私が厳禁している禁断のえさ(市販の鳥からあげやローストビーフ、焼き豚など)をりきゅうにこっそりとあげていた(に違いない)。 それを“二人”で知らんぷりする。秘密を共有すると、動物でも人間でも絆は深まるものなんですね。
 
 脚力をつけるために散歩は欠かせない。以前は散歩に遠、中、近の3コースを設け、遠距離と中距離を朝昼晩と連れ歩いていたが、去年の夏過ぎから排泄を済ませると「帰ろう,帰ろう」が始まった。 強靱な意志でリードを引っ張り、いちもくさんに帰宅を目指すのである。行きはだらだら歩いているくせに、こうなると全速で走る。 「まだ脚は大丈夫なんだな」と思うけれど、よく見ると後ろ脚がもつれそうになっていたりする。 まだ私の数倍の速さだけれど、あのかもしかのようなチータのような駆けっぷりは、もう見られなくなった。
「帰りた〜い!」というりきゅうを説得してもう少し散歩を続けようとすると、わざとぼてぼてと歩いたり立ち止まったり、道路の側溝でこけてみせたりもする。散歩続行を拒否するパフォーマンスなのである。
 昨年の夏に死んだ仲良しのヴィッキー(享年13歳 雑種、♂)の飼い主さんが、「あんなに大好きだった散歩をいやがるようになった」と言ってたっけ。
現在、朝晩、太ももマッサージをしているがどこまで効き目があるだろうか。
温泉に湯治に連れて行ってあげたり水泳でリハビリをさせたいが、水が大の苦手のりきゅうはとてもおとなしく入るとは思えない。脚が衰え、やがて食欲がなくなり・・・父の亡くなる過程をそのままたどるような気がする。まだ、介護補助器具を使うまでにはいたっていないが、老犬介護が始まりつつあると覚悟する毎日だ。
(次号つづく)