平野久美子 TOP TOPICS JORNEY TAIWAN DOG BOOKS TEA
第二回 孫にも衣装??
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 いつのころからか、りきゅうは暑いのも寒いのも苦手になった。小さい頃は雪がふると庭に出て童謡そのままに駆け回っていたのだが、ガラス戸越しに銀世界を見て、ため息をついている。オシッコをするために外へ出ても、さっさと戻ってくるところを見ると、足が冷たくて嫌なんだろう。

 2010年2月、東京に雪が降った日私はイタリアにいたので、このときりきゅうがどういう反応をしたか見ていないが、きっと羽布団の上でぬくぬくしていたに違いない。

 というわけで、ついにりきゅう用のセーターをオーダーすることにした。母が残り毛糸を寄付してくれたので、編み物が得意の叔母にお願いした。残り毛糸を適当につないで編んでくれればそれでいいという軽い気持ちで。

ところが実際の作業は大変だった。叔母は動物が苦手で、犬を飼ったこともない。ましてや洋服などつくったことがない。だから犬の前後の足がどんなふうに動くのか、しっぽはどのあたりから生えているのかまったく知らないのである。おまけに私が大の裁縫嫌いだから(なにしろ中学時代に落第点をとっている)型紙を起こすなんてこともできない。編み物も出来ない。

しかたないので、りきゅうのレインコートをそのまま渡し、「なんでもよいからこのとおり編んで下さいませ」とお願いしたのだった。

しばらくすると仮縫いがしたいと申し入れがあった。

「へえ〜 仮縫い???」

「そうよ、仮縫いをしないとぴったりしたものができませんよ」

1月の中旬、半分ほどできあがったセーターをりきゅうに着せて仮縫いが行われた。その時のりきゅうの神妙な顔つきと言ったら・・・・ははは、みんなで大笑いしてしまった。その後私はイタリアへ旅立ったので、どんなふうに仕上がってくるかほんとに楽しみだった。

帰国してみたらスバラシイ作品ができあがっていた。ラグラン袖ですよ〜なんと!

 これを着ると暖かいのかりきゅうは全然嫌がりません。なんだか、いっそう人間ぽくなって、いまにもしゃべりそう。犬に洋服を着せるなんて言語道断!と長い間思ってきたが、この姿を見てコロリと主義が変わってしまった。孫がいないからわからないけれど、きっと孫にカワイイ洋服でも買い与えると、こんな自己満足に浸るのだろう。

あーあ、こんなふうに思うってことは、飼い主も愛犬同様に歳をとったってわけか。