平野久美子 TOP TOPICS JORNEY TAIWAN DOG BOOKS TEA
日台の知られざる水の絆の物語 〜 「鳥居信平」  鳥居鉄也さん(1918〜2008)死去
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 2008年10月16日12時10分、鳥居信平のご子息にあたる鉄也さん(90歳 日本極地研究振興会理事長)が、心不全のために亡くなられた。南極観測の先駆者としての功績は、日本の科学史に永久に記されるだろう。

 昨年6月に初めてお目にかかって以来、父上の鳥居信平(1883〜1946)の取材で1年数ヶ月にわたり大変お世話になった。昨年7月に水利学の重鎮である高須俊行さん、山本光男さんらとともに、神田の学士会館でお目にかかったとき、鳥居信平のことを広く知らしめるために、どのようにしたらよいだろうと話し合った。その席で私は、まず雑誌の記事を発表し、その反応を見ながら最終的には単行本にできればいいが・・・と発言した。このときは夢のような話しだったのだが・・・。

ご承知のように2008年2月発売の『諸君』(文藝春秋)に記事が載ると、日台双方で思わぬ反響が起こり、農林省関係の専門誌にも寄稿することができた。中でも嬉しかったのは、許文龍氏が鳥居信平の胸像を制作して下さったことである。この胸像はすでにできあがり、現在台南県にある「奇美博物館」に後藤新平や八田與一らの胸像といっしょに収められている。ぜひ機会が会ったらご覧頂きたい。なお、別の一体は2009年1月6日に屏東県林辺渓で除幕式が行われ、もう一体は2009年5月に信平の生まれ故郷静岡県袋井市に設置される。

この胸像制作と同時に進んだのが、台湾側から申し出のあった単行本の作業だった。

すでに原稿の漢訳が終わり、最終の校正に入っている。予定通り行けば年内に本になるだろう。また、日本の出版社からも単行本化のお話しを頂き、こちらは来年4月をメドに加筆しているところだ。

以上のように、鳥居信平にまつわるさまざまのことが順調に進んでいるのも、鉄也さんと国立屏東科技大学の丁教授の熱意の賜物と思っている。

あれほど胸像と単行本の完成を心待ちにしておられた鉄也さんがいなくなってしまい、私はとても寂しい。返す返すも残念だ。あの包容力のある笑顔で、「ほんとうによかった」言って頂けることを楽しみにしていたのに・・・

だが、お葬儀で最期のお別れをしたとき、鉄也さんが笑顔で見守っていて下さることを確信した。まだ最終ゴールまでは道のりがあるけれど、どうぞ日本と台湾の双方が水の絆をとおしてより強く結ばれますように。鉄也さんのご冥福を祈りつつ・・・・・
屏東県長からも供花が。手前はご遺族。   鳥居鉄也さんの祭壇。戒名は釈鉄照居士