平野久美子 TOP TOPICS JORNEY TAIWAN DOG BOOKS TEA
「トオサンの桜」の主人公、王海晴さんの桜を見に行くツァー・ご報告
2014年1月23日~25日
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このツァーは、拙著『トウサンの桜』(小学館刊)の主人公であり台湾の桜守と言われる王海晴さんが、30余年にわたってこつこつと植えてきた桜を観賞する旅です。王さんの桜と笑顔が見たくて、日本からも台湾からも40名を超える多くの人が参加して下さいました。王さんが中部南投県埔里と山奥の霧社を結ぶ約全長23キロに及ぶ道路と霧社の村に植えた桜はすでに5000本を越えました。その昔、貧苦にあえいだ彼をなぐさめたのは日本人が植えた桜の花・・・・しかし、国民党時代になると桜は軍国主義のシンボルだと忌み嫌われ、道路拡張を理由に次々と切り倒されてしまったのです。
しかし、桜の美しさが忘れられぬ王さんは、いつか必ず霧社を桜の里として復活させたいと思うようになり、定年後、苗木事業で貯めたお金でひとり、壮大な桜計画を実行し始めました。いまでは王さんの桜が埔里―霧社間の道路をいろどり、霧社の里を紅に染め、台湾でも有数の桜の名所になっています。

私は10年前に王さんのことを知り、信念に基づいて続けること、愛着のある土地(それはふるさとだけとは限らない)に自分の経験と富を還元すること、その大切さを王さんから教わりました。
今年91歳になられた王海晴さん、相変わらず春の光のような温かな笑顔の持ち主で、ツァーの時も不自由な身体にもかかわらず精一杯歓迎してくれました。
我々の訪問に合わせて、埔里鎮長が感謝状を贈呈するというセレモニーもあり、忘れられぬ1日となりました。
王さん、どうぞいつまでもお元気でお過ごし下さい、来年の桜の季節にまたお目にかかれることを心から楽しみにしております。
東京での講座
千代田区紀尾井町の会場で今回のツァーのテーマを勉強しました。
・ 台湾の日本語世代
・ 霧社事件
・ 新竹事情

約2時間半の講義でしたが、ほとんどの方が熱心に受講してくださいました。旅は、どれだけ事前に情報や知識を持っているかで、持ち帰るものの量が違ってくるのではないでしょうか。漫然と物見遊山するのもひとつのスタイルではありますが、テーマに沿って自分の好奇心を発揮し、現地でも学びながら考えをめぐらせる旅をしていただきたいと思っております。
羽田国際空港に午前6時20分集合と、朝がとびきり早くかったのですが、参加者の皆さんの大半は6時に顔を揃えていました。出発前から気合いが入っておりますね。お一人、空港で不都合が発覚して無念のキャンセルとなりましたが、総勢28名が無事に機内へ。
11時に、台北駅で台湾側の参加者15名と待ち合わせ、新幹線で台中へ向かいました。
台湾側の参加者は最高齢が93歳。ほかにも90歳の方、80代後半の方が半数ほどで、お嬢さんと参加なさった方、お友達といらした方など、皆さんの元気パワーに圧倒されつ放しでした。
日本側の皆さんが寝不足なのでは・・・と思いましたが、車中でもお休みの方は少なく、
すでに車内は日台交流が始まり、にぎやかなこと、なごやかなこと!! 眠気もどこかへ置き忘れ、人生の先輩方のお話に耳を傾けました。
埔里ではまず紹興酒と清酒工場を見学。 試飲のできる売店でいろいろ飲んだせいか、ほんのり桜色になって夕食の会場へ移動。客家料理のレストランで地元の鄧教授から霧社事件について講義を受けました。鄧教授は、遺族を訪ねて研究を続け霧社事件に関する多くの著作をお持ちです。私も先生のファンの一人として実際にお話を伺えたことほんとうに嬉しかった。鄧教授の視点は、被害者、加害者という見方を越え、事件の本質、その背景にある異文化の衝突にフォーカスしており、客観的な分析が際だっております。「学んで旅する、旅して学ぶ」をモットーにしたツァーですので、参加者の皆さんも満足していただけたと思います。

その後、里の宿と山の宿に別れて分宿。山の宿は霧社に近い場所だったので、チエックインがかなり遅くなってしまいました。
お疲れさま
山の宿は王さんが懇意にしている民宿で、ガーデニング好きのご主人が手入れをする自慢の庭が素晴らしいところ。里の宿は温泉付きです。それぞれ良さがあったと思いますが、意外な寒さにふるえたり、民宿ならではの経験ができました。
朝の10時にふたたび合流し、いよいよ王海晴さんのお宅に向かいます。
10時半到着。すでに地元のメディアがたくさん来ていました。
実はこの日、埔里の周鎮長が粋な計らいをして下さり、王さんに長年の植樹運動に対する感謝状が授与されたのです。私たちが見守る中、感謝状を受け取った王さんは、いつにも増して穏やかな笑顔を見せて下さいました。
杖をつきながら、自宅の庭に設けた種苗場で、「これが大島桜、こっちが河津桜・・」と説明をして下さる王さんにもお嬢さんたちの心のこもったおもてなし(美味しいバナナ、飲み物など)にも、一同感激いたしました。
鎮長からお話があり、今後は鎮政府も桜の保護活動をバックアップしていくとのこと。
また、長女ご一家が王さんの意思をついで資金の提供もすると聞き、お子さんたちにトオサンの心情がようやく伝わったのだと、涙が出るほど嬉しくなりました。

その後、桜を見ながら霧社に行き、小さな村を訪れてセデック族の民芸品を購入。その後台中へ戻る途中でレストランへ(またまた客家料理でした。今回は鎮長さんのおすすめだったので、どちらも美味しかったです)
食事を済ませてから新幹線で新竹へ移動し、夜は自由行動にしました。
新竹観光と桜見物。
朝から新竹の桜守の皆さんが熱烈歓迎です。陳さんからまず客家のお餅の差し入れ。朝食をたくさん食べたはずなのにこういうものはおなかに収まってしまうのですね~。バスで新竹公園へ行くと、なんと新竹市から観光局長、文化局長、動物園長、そして市長までがお出迎え。大変な歓迎ぶりでした。日本時代に立てられたガラス博物館や動物園を見学した後、公園で記念写真を撮り、公園での桜を見たのですが、残念ながらまだ二分咲き。もう一ヶ月遅かったらピンクの海になっていたでしょう。
なお、新竹に植わっている河津桜は日本から寄贈されたものですが、苗木を台湾の母木に接ぎ木して養生します。その母木は王海晴さんの育てたものです。つまり新竹でも王さんの桜が、日本の桜の土台として活躍しています。

下の写真は、満開の様子です。
その後、今年101周年を迎えている新竹駅を見学。先人たちが残した遺産は現役で活躍中です。市政府が先導しているので、一般客をものともせずに説明会、撮影会となり、日本の私たちは少々恐縮してしまいました。昼食をとったあとバスで台北へ移動し、台北駅で台湾側のみなさんとお別れ、いつもながら名残惜しさが募ります。台湾のトオサン、カアサン、大変お世話になりました、どうぞお元気で!!
そして松山空港へ。皆さん無事に帰路につくことが出来ました。

大人のスタディーツァーと銘打って、東京と台北の旅行社の協力を得て計4回行いましたが、どの回も大変印象深い旅と成りました。特に第三回と今回は日台双方からの参加者が同じテーマで旅行をすることによって、話しもはずみ絆も深まったように思います。現地でも講座を設けましたので、生きた台湾の情報や知識を日本の参加者が得られたことも普通のツァーとは違ったと思います。
「学んで旅する、旅して学ぶ」をモットーに、また新しい企画ができれば、皆様をお誘いしたいと思います。