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監督はどちらのご出身ですか? |
魏 |
僕は南部生まれです、台南県の永康です
*やっぱり・・。映画に登場する人も生活も笑いも音楽もまさに台湾。セリフも台湾語が中心です |
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この映画のキモとも言える60数年前のラブレター。ストーリーに入れ込むというアイディアはどのように浮かんだのですか? |
魏 |
単なる若者の音楽にかける夢の話しやラブストーリーではつまらないし新鮮味がないので、以前(註・2004年の掲載記事)新聞で読んだ、2年かけて郵便配達夫が未配達の手紙を届けた、というエピソードを想いだし、それがラブレターだったら・・と想像して脚本に加えました。現代の若者たちの愛情は実にインスタント。ファストフードみたいなもの。それに比べて、時空を超えた愛情、時間が醸造してくれる愛がどれほど永遠のものかということを表現したかった。 |
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海角七号』は日台間の戦争の歴史に触れていますが、淡々と描いていますね。こうした史実を通し、何を一番訴えたかったのでしょうか? |
魏 |
どんなに歴史を勉強しても自分は戦後第二世代だから、日本統治時代のことは実感としてわからない。 日本時代を愛して良いのか憎んでよいのかさえもわからない。しかし、僕でも理解できるのは動乱を超えた愛情とか友情とか肉親愛とか・・・・台湾は残念なことに歴史が即政治になってしまうが、僕は政治からこぼれ落ちた一人ひとりの歴史の内面をすくいあげたかった。
*監督がこの映画で描きたかったこととして日本人教師に言わせているセリフ。
「貴族のように傲慢にふるまっていた僕たちは一瞬にして罪人の首かせをかけられた。だが、自分は貧しい一介の教師。どうして僕が民族の罪を背負えよう、時代の宿命は時代の罪」。 |
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ラストシーンに響き渡る『野バラ』(シューベルト)が大変印象的に使われています。この楽曲を選んだ理由について・・・ |
魏 |
戦前日本が遺していった唱歌の中で、今も学校で歌い継がれていること。
恋の対象となった愛らしい女生徒が、野原にひっそりと咲くイメージに重なった
→歌われ続けていることで、時間の流れを表現したかった |
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あなたの創作活動で、最も心がけていることは何ですか? |
魏 |
今後も台湾の歴史を核としたストーリーを映画化していきたい。それが台湾と日本であれ、台湾と中国であれ、隠れたエピソードがまだ山のようにあると思う。互いの間に遺された恨み言やしこりが溶けていくようなものを作りたい。我々台湾人は、民族の違いや政治、歴史、宗教的信条の違いであまりに多くの恨みや矛盾を抱いて生きてきてしまった。これらを解消するのは容易なことではないが、ひとつひとつ解きほぐしていかないといけない。親同士が喧嘩をしているからといって、子供たちまでいがみ合うのはおかしい。和解の手段をさぐることこそ、我々戦後世代の使命と思っている。 |
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次回作は「霧社事件」を取り上げる予定だそうですね。 |
魏 |
もちろん難しい作業と覚悟している。だが、原住民の立場から見直したい。特に原住民の信仰と事件との関係。日本は太陽を崇拝する民族、原住民は虹。なぜ同じような自然神を崇拝する民族同士が殺戮し合ったのか? 僕には興味がある。 |