平野久美子 TOP TOPICS JORNEY TAIWAN DOG BOOKS TEA
『海角七号』の魏監督にインタビュー、現地ツァーにも行ってみた
 
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2008年8月の封切り以来、台湾で史上空前の大ヒットを更新中の映画『海角七号』(魏徳聖監督)は、3ヶ月で興行収入は4億6千万台湾ドル(約13億8千万円)を超え、『ジュラシック・パーク』や『007危機一髪』を抜き、歴代一位の『タイタニック』に迫る勢いです。 社会現象にまでなっているこの映画『海角七号』は、日台のラブストーリーに台湾流の笑いと音楽をちりばめたもの。 ひと味違う仕上がりになったのは、60数年前の未配達のラブレターを構成に織り込んだため。敗戦国の民として台湾を追われる日本人教師が、想いを寄せる女生徒に引き揚げ船の中で綴った七通の手紙が重要な役割をします。

ついに、范逸臣(ファン・イーチェン)演じる郵便配達の若者が、幻の番地「海角七号」を探し当て往年のラブレターをそっと届けます。やがて、夕闇の中でひとりの老女が手紙に気付いて・・・。 感動のラストシーンを包みこむのは唱歌『野バラ』のメロディーです。私はこの映画を11月初めに高雄で観たが、場内からは歌詞を口ずさむお年寄りやすすり泣く若い女性が目に付きました。世代を問わず観客の心をつかんだのは、戦争を超えた純愛であり、日台の歴史に寄り添う心の絆ではないでしょうか? この映画のおかげで若者たちが戦前のことを知りたいと思うようになったというのもうなずけます。
 
映画を観たあと、私は高雄から国光バス88号に乗って恒春へ。コンティンの民宿に一泊してから早朝発の「海角七号浪漫之旅」という特別バスツァーに参加しました。全行程9時間。映画のロケ地を回りながら恒春半島の主だった観光スポットを回ります。昼食はなんと、映画に登場するデラックスホテル「夏都大飯店」(シャトーホテル)のダイニングで海を観ながらの特別料理!(ちょっと期待はずれ) お一人様1314元コース。

参加者16名は台北からがほとんどで、ほかには台中、嘉義からも。カップルと家族連れの中で一人参加は私だけでした。しかし、日本人が『海角七号』に興味を示しているというので、ガイドさんも大サービス。懇切丁寧に案内をしてくれたのでした。
ちょうど1年半前に、恒春半島を屏東文化局の招待で回ったときは閑古鳥が鳴いていたようなスポットまでいまや人の波。映画の影響力の大きさを実感しました。
参加者は『冬のソナタ』にはまった日本のオバサン同様、全員、映画と現実がわからなくなっている人ばかり。主人公の阿嘉が下宿していた部屋や茂伯(月琴弾きのおじさん)の家に来るたびにどっとどよめきが・・・。ロケ現場は映画で使った小道具がそのまんま置いてあり、出演者のサインやら写真が貼ってあるので大いに雰囲気が盛り上がる。

圧巻は年老いた「友子」(日本人教師が置き去りにした台湾の恋人)のもとに阿嘉が60数年前のラブレターを届けた家への訪問だった。「アイヨー!」全員が大興奮して、映画のシーンと同じにポーズを撮り、記念撮影の嵐(映画では年老いた友子がビンロウの仕分け作業をしている。ベンチに座り竹ザルの前でみんな、友子になりきる)です。
儀式のように記念撮影を済ませると、みな顔が紅潮しぼんやりして、おみやげ屋の前を素通りだ。(もちろん屋外には映画に登場した原住民グッズやお酒、CD、ハガキ、写真集などがどっさり)

 こうした経済効果はすさまじく、屏東県は想定外の観光収入に笑いが止まらない。日本で放映後同じようにヒットしたら、日本からもツァー客が南へ下っていくのではないでしょうか?
 
このバスツアーに関する詳細は「台湾観光バス」をご覧ください。

台灣觀光巴士「海角七號」行程

出發時間

08000830(天天出發、一人成行)

集合地點

屏東客運恆春轉運站/墾丁地區各飯店

全程時間

全程9.5小時

費 用

尋找海角一日遊行程
NT 1314
/人:含車資、夏都酒店五星級套餐+導覽、保險、導覽解、港口吊橋門票
NT100
/人:不佔位幼童(保險費),不含餐

尋找海角上半行程(上午)
NT999
/人:含車資、保險、導覽解
、港口吊橋門票、夏都酒店五星級套餐+導覽
NT100
/人:不佔位幼童(保險費) ,不含餐

尋找海角下半行程(下午)
NT450
/人:含車資、保險、導覽解

NT100
/人:不佔位幼童(保險費),不含餐

行 程

(上午)

墾丁地區飯店接駁(08:00-08:20恆春西門恆春老街阿嘉家茂伯家海角七號港口吊橋龍磐公園夏都酒店五星級套餐+導覽(僅參加上半行程者(13:00)返回飯店)

(下午)

恆春貓鼻頭白砂山海萬里桐車城射寮村代巡宮 (喜宴的地方)→福安宮(演唱會選樂手的地方)→返回飯店(18:00 (僅參加下半行程者(13:30-13:50)墾丁地區飯店接駁)

台北で魏監督を訪ねました。雑居ビルのオフィスに着いたとき、すぐに監督が出てきたのですが、黒いTシャツにジーンズというラフな格好だったから、通訳の張さんは
アルバイトスタッフと思ったほど。魏監督(40)は実にきさくにインタビューに応じて下さいました。出演俳優(范逸臣、田中千絵、中孝介ら)のことについてはすでにネットに出ています(9月に幕張の映画祭でグランプリを取ったときのもの)したがって、それとは別のことで印象深かったことを記します。
監督はどちらのご出身ですか?
僕は南部生まれです、台南県の永康です
*やっぱり・・。映画に登場する人も生活も笑いも音楽もまさに台湾。セリフも台湾語が中心です
この映画のキモとも言える60数年前のラブレター。ストーリーに入れ込むというアイディアはどのように浮かんだのですか? 
単なる若者の音楽にかける夢の話しやラブストーリーではつまらないし新鮮味がないので、以前(註・2004年の掲載記事)新聞で読んだ、2年かけて郵便配達夫が未配達の手紙を届けた、というエピソードを想いだし、それがラブレターだったら・・と想像して脚本に加えました。現代の若者たちの愛情は実にインスタント。ファストフードみたいなもの。それに比べて、時空を超えた愛情、時間が醸造してくれる愛がどれほど永遠のものかということを表現したかった。
海角七号』は日台間の戦争の歴史に触れていますが、淡々と描いていますね。こうした史実を通し、何を一番訴えたかったのでしょうか?
どんなに歴史を勉強しても自分は戦後第二世代だから、日本統治時代のことは実感としてわからない。 日本時代を愛して良いのか憎んでよいのかさえもわからない。しかし、僕でも理解できるのは動乱を超えた愛情とか友情とか肉親愛とか・・・・台湾は残念なことに歴史が即政治になってしまうが、僕は政治からこぼれ落ちた一人ひとりの歴史の内面をすくいあげたかった。
*監督がこの映画で描きたかったこととして日本人教師に言わせているセリフ。
「貴族のように傲慢にふるまっていた僕たちは一瞬にして罪人の首かせをかけられた。だが、自分は貧しい一介の教師。どうして僕が民族の罪を背負えよう、時代の宿命は時代の罪」。
ラストシーンに響き渡る『野バラ』(シューベルト)が大変印象的に使われています。この楽曲を選んだ理由について・・・
戦前日本が遺していった唱歌の中で、今も学校で歌い継がれていること。
 恋の対象となった愛らしい女生徒が、野原にひっそりと咲くイメージに重なった
→歌われ続けていることで、時間の流れを表現したかった
あなたの創作活動で、最も心がけていることは何ですか?
今後も台湾の歴史を核としたストーリーを映画化していきたい。それが台湾と日本であれ、台湾と中国であれ、隠れたエピソードがまだ山のようにあると思う。互いの間に遺された恨み言やしこりが溶けていくようなものを作りたい。我々台湾人は、民族の違いや政治、歴史、宗教的信条の違いであまりに多くの恨みや矛盾を抱いて生きてきてしまった。これらを解消するのは容易なことではないが、ひとつひとつ解きほぐしていかないといけない。親同士が喧嘩をしているからといって、子供たちまでいがみ合うのはおかしい。和解の手段をさぐることこそ、我々戦後世代の使命と思っている。
次回作は「霧社事件」を取り上げる予定だそうですね。
もちろん難しい作業と覚悟している。だが、原住民の立場から見直したい。特に原住民の信仰と事件との関係。日本は太陽を崇拝する民族、原住民は虹。なぜ同じような自然神を崇拝する民族同士が殺戮し合ったのか? 僕には興味がある。