平野久美子 TOP TOPICS JORNEY TAIWAN DOG BOOKS TEA
『テレサ・テンが見た夢』(晶文社刊)が、来年春に筑摩文庫になります!
 
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 来年2015年はテレサ・テンが亡くなって20年目。え?もうそんなに経ったの? と思われる方がほとんだと思います。亡くなってもなお、カラオケで歌われ続けている彼女のヒットソングは、生前のテレサを知らない世代からも支持を受けています。この現象は日本だけではなく、中国、香港、台湾、東南アジアでも同様です。
20回忌という節目もあり、19年も前に書いたテレサの評伝が文庫となって再出版されることになりました。

 私は日本で知られるロマン歌謡のテレサ・テンにはほとんど興味がなく、世界の華人社会に君臨していた「ケ麗君」(デン・リーチュン)という歌手の出自を描きました。したがって、ほとんど日本の芸能界には取材しておりません。インタビューした人々は香港や台湾の関係者ばかりです。(この本はよくもまあ・・・と思うほどテレビ番組のネタ本にされましたが、一番描きたかったことは政治がらみになるのかいつもオミット。しかし、アジアの歌謡界に君臨した「ケ麗君」を知らしめる役割にはずいぶん貢献したと自負しております)
 
 彼女の父親は、ご存じのように、国共内戦に敗れて台湾へ逃げ込んだ蒋介石軍の下級軍人でした。

 テレサは台湾で1953年に生まれますが、外省人(戦後台湾へやってきた中国人)2世として自身のアイデンティティーに悩みながら成長します。台湾は生まれ育った国とは言え、父祖の国とはまったく違う言葉や文化を持っていて、一家はなじめません。そのため商売もうまくいきません。そこで幼い頃から歌のうまかった彼女がプロ歌手となり、その後の生計を支え、有名になってからは国民党軍の慰問に精を出すのです。

 1980年代に入ると、テレサ・テンは念願叶って日本でも大成功し、その名を華人社会にとどろかせます。しかし、天安門事件により彼女は香港を逃れパリへ。それからはチェンマイに転居して夢の実現を試みます。その途中で急逝したテレサ・・・・果たして彼女はどんな夢を見ていたのでしょうか?

 詳しいことはぜひお読みいただくとして、世に言われているテレサのスパイ説や民主化の女神、という位置づけに私は違和感を覚えます。彼女は天才歌手でありますが、それ以下でもそれ以上の存在でもないからです。

 あれから20年・・・・時代は動きました。台湾や中国、香港、日本。それぞれの20年を振り返ると感慨深いものがあります。文庫本では、これらのことやテレサの恋や夢について加筆し、新たな装いで発刊します。

●発売予定は来年4月。筑摩書房の筑摩文庫からです。