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私が敬愛する歴史家の史明さんは今年96歳。今も週に2回は街宣車に車椅子ごと乗り込み、地方へ遊説に出かけ、若者たちに台湾語(ホーロー語)で台湾民族主義を語り続けている硬骨(恍惚ではない!!)の人。史明さんとお目にかかるたびに、ぶれることのない信念、台湾を思うひたむきな情熱、民衆に視点を置いた運動のありかたに強く惹かれ、ますます感服して、勇気をもらって帰ってくる。 |
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私が史明さんに初めてお目にかかったのは、いまから10年以上前のこと。名著『台湾人400年史』の作者はどのような方なんだろうという単純な好奇心からであった。お知り合いの劉さんに連れられて新店にあるオフィスに伺ったときのことは忘れられない。室内にはチェ・ゲバラの写真や武者小路実篤が書いてくれたという色紙、街宣活動のビラのたぐいが置いてある。 |
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そして入り口のところまで“門前列をなす”のは各国からやってきた若者たち。聞けば、ロサンゼルスから、南米から、日本から、と世界各国から師とあおぐ史明さんのお話を聴きにはるばるやってきているのだ。そうした彼らに対し、史明さんは常に温かく、情熱的に迎え、食事をふるまい、何時間も討論するという。 |
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以来、私は老歴史家の生き様に感動して、来日したときは池袋にある中華料理店(彼が日本時代に始めた店。数年間暮らした大陸の味を提供していた)にもおじゃましてお話を伺った。数年前、日本の病院に入院したときもお見舞いにかけつけた。拙著『トオサンの桜』を献呈したときは、よく読んで下さり「あなたはね、民衆の立場からこれを書いた、そこが非常によい」とお褒めをいただいた。 |
6月に台湾へ行ったときもお目にかかってきたが「僕が帰国してから20年、ずっと唱え続けてきた“台湾民族主義”という考えがようやく浸透してきた」といくつかの新聞報道を見せて下さった史明さん。そこには、3月の学生運動に呼応して街頭に出て、学生や民衆によびかける気迫の姿があった。最近は学生たちのカリスマとしてメディアに登場する機会がますます増えているという。 |
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96歳の身体は「不思議なほどよくもっていますね。信念と使命感、これが僕の健康の秘訣ですよ」と笑う。史明さんは李登輝氏故黄昭堂氏らとはスタンスが違う。あくまでも民衆の中から運動を起こし、広げるというスタンスをとり、権力と対峙する姿勢を崩さない点だ。
「台湾は絶対独立します、これは歴史の必然です」
老歴史家の言葉は確信に満ちている。 |
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