平野久美子 TOP TOPICS JORNEY TAIWAN DOG BOOKS TEA
『坂の上のヤポーニア』贈呈式およびステポーナス・カイリースのセミナー
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2011年4月18日と21日の両日、リトアニアのカウナスとヴィリニュスで、ステポーナス・カイリースのセミナーと拙著『坂の上のヤポーニア』の贈呈式が行われました。

いつも思うことですが、ノンフィクションを1冊上梓すると、その後次々に予期せぬ事がおこり、輪がひろがっていきます。今回の『坂の上のヤポーニア』も思わぬ展開となり、リトアニアとの絆がまたいっそう深まりました。
リトアニアへと旅だったのは4月15日。日本で天気をチェックしていたときは、日中7,8度、夜間はマイナス1度ということだったので冬支度をしていったら、なんと一気に春めいた気候となり、最終日まで日差しが初夏のようでした。(ただ、夜間はぐんと気温が下がったため油断をしているうちに風邪をひきました。)

24日が復活祭にあたるため、街ははなやいでおり、春の到来を告げる紫の忘れな草、ネコヤナギ、チューリップ、フリージア、常緑樹の若芽、復活祭の卵を売る露店があちこちに。人々のうきうきした気分があふれていました。

「リトアニアは敬虔なカトリック信者が多いため、復活祭1週間前の日曜日はどの教
会もミサに集まった人であふれかえり、復活祭の準備のために飾りものを買い込む市
民が朝早くからくりだし、ヴィリニュスの旧市街、夜明けの門の広場では市がたって
いました(写真参照)」

リトアニアの方々からも日本の大震災へのお見舞いの言葉をたくさんいただきました。

彼らは1986年にチェルノブイリ原発事故の記憶がぬぐえぬせいか、特にフクシマに関心が強く、一日も早い復旧とこれ以上の犠牲者がでないことを祈っていると、口々に言っていました。チェルノブイリのときは、何も知らされず、事情のわからぬまま作業にかり出された兵士たちがたくさんいたそうです。

現在、リトアニアはソ連型の古い原発の運転を停止しましたが、ベラルーシとカリーニングラードとまさに東西の国境に原発計画が持ち上がっているので、心配の種は尽きません。

さて、4月18日は、カウナスにあるヴィータウタス・マグヌス大学図書館大講堂でカイリースの研究家が集まり、高名な政治家および技術者のもうひとつの側面、つまり「日本研究家」という点に焦点を当ててセミナーが行われました。

夜明けの門の前では市場が。ヴィリニュス独特の飾り物ファルバ
精緻な図案が卵の殻に描かれている
●セミナー「戦間期の社会活動家 ステポーナス・カイリース・リトアニアにおける日本研究のパイオニア」 4月18日17時〜
セミナーでの講演者は以下の通りです。
 
1.平野久美子・・カイリースが描いたニッポン
カイリースが紹介した明治期ニッポンの映像を上映しながら、彼が日本をどのように表現したか、どんなところに興味をもっていたのかなどを解説。
2.ラサ・チェルニャスカイテ女史 カイリース記念学校副校長
アンゲレ・ドゥディエネ女史 郷土史研究家。カイリースの生まれ故郷で、彼の研究を続けるお二人から、その功績を紹介
3.アスタ・ブリエイディエネ博士 ヴィータウタス・マグヌス大学
戦間期カウナスにおけるカイリースの活動について
4.クリシューナス教授 カウナス水道博物館
カウナスへの貢献、水道技師としてのカイリース
(ヴィータウタス・マグヌス大学の日本学センター所長、ジーカス先生、有り難うございました。おかげさまで、セミナー後、学生さんたちとも日本について、カイリースについていろいろお話しを交わすことができました。)
カイリースの出身地からかけつけた皆さん。右端は姪の長女
司会も務める日本学センター所長ジーカス氏
● 『坂の上のヤポーニア』贈呈式 4月21日 15時〜
ヴィリニュスのリトアニア科学アカデミー図書館にて行われました。カイリースの日本論三冊の初版本を所蔵している図書館です。ホールに多くのみなさんが集まり、図書館長、日本の明石美代子大使のごあいさつのあと、平野、図書館研究員のライリエーネ女史、カイリース基金会からは国会議員のオレカス氏、リトアニアで高名な指揮者サウリュス・ソンデツキス氏の順でスピーチがありました。

20世紀の初め、近代国家として世界に船出した日本に熱いまなざしを注ぎ、自分たちの独立に日本をお手本にしようと決意した青年がいたのです。彼は日本に来ることもなく、リトアニア語で初めて日本論を書き、一般大衆に手本となるべき国ニッポンを紹介しました。 その熱き思いは、明治時代に国家を立ち上げた日本の若者と共通するところがあります。
贈呈式でスピーチする明石美代子大使
リトアニアと日本との関係と言えば、あの命のヴィザを発給した外交官杉原千畝くらいなものでしょう。もっともっと日本でも知られて欲しいとの思いを強くしました。

関係各図書館、研究機関、大学などへ10冊の寄贈をいたしましたが、それぞれ代表の方がおいで下さり、お手渡しできたことほんとうにうれしく思いました。

今回、1918年にリトアニアの独立宣言が行われた「署名の館」(ヴィリニュス)も見学してきました。そこのゲストブックには各国のVIPがサインをしていましたが、私も一筆書かせていただきました。 

国想う 遙けき心 雲立ちぬ
スピーチする国会議員olekas氏
元在日リトアニア大使館文化部勤務のズカウスキエネさんと
大使館公邸でのビュフェパーティー