平野久美子 TOP TOPICS JORNEY TAIWAN DOG BOOKS TEA
うれしの茶に、ほろ酔い気分
 
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佐賀県嬉野温泉に来たついでに、長崎でお知り合いになったうれしの茶の生産者のお宅をたずねた。この日はあいにくの大雨で、茶畑や加工場を見学することはできなかったが、代わりに、代々茶農家として生活している太田さん親子から、うれしの茶の現状やその歴史をうかがうことができた。

九州の緑茶と言えば、明代に大陸からやってきた人々から伝承した釜炒り茶が思い浮かぶが、現在は、全国を席巻する狭山の深蒸し茶のおかげで、生産量が少なくなっているという。この深蒸し茶というのはすぐれものではある反面、日本各地それぞれの風土が生んだ番茶を駆逐してしまった張本人だ。今から20年ほど前、私は小学館発行の雑誌「サライ」で、地方の個性あふれる番茶特集を担当したことがあった。新潟村上、出雲、京都などいくつかの代表的な番茶産地のほかにも、いろいろな地方茶が残っていたから、誌面ができたのだけれど、日本茶の均一化は驚くべきスピードで進んでいる。いまや全国のどの旅館に泊まっても、にたような味の煎茶がでてくるでしょう。

うれしの茶の産地も苦労をしているようだ。現在の生産量は、全国総量の2パーセントにしかあたらず、しかも、釜炒り茶はうれしの茶の中でも5パーセントにすぎないという。後継者の問題もさることながら、お茶の卸売り単価が年々下がっていき、大規模のところしか生き残りがむずかしくなっているという。太田さんの茶園は、すでに30年近く無農薬栽培を続けているが、その維持費と売り上げのバランスをとるのが大変だそう。その昔は、近代日本の外貨獲得に大きく貢献した九州のお茶が、じわじわと窮地に追い込まれている。

そんな話を聞きながら、しみじみと味わった窯入りの玉緑茶(つまりうれしの茶の伝統)。一心二葉よりも、その下の三葉を使い、うまみをひきだしている。私は、その味わいに陶然となってきた。「ほのあまーい・・・・」渋みのカテキンをおさえ、うまみ成分のテアニンをひきだしているせいか、脳内の快楽物質を呼び覚まし、体にしみわたって細胞がとろけていくような感じがする。降りしきる雨の音が、築100数十年の農家の屋根をとおして聞こえる昼下がり。とても素敵な時間をもてて、感謝でいっぱいになった。

みなさんもぜひ、うれしの茶で、至福のひとときを過ごしてみてください。

下記のサイトからネット注文もできますよ。
太田重喜製茶 http://www.sagaryo.co.jp/